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ハイドロゲル・スペーサーを用いた前立腺がんの放射線治療

 放射線治療は、前立腺がんに対する標準的な治療のひとつとして、広く普及しており、外部放射線治療、密封小線源治療など様々な方法があります。 当センターでは、強度変調放射線治療を使用した外部放射線治療を行っています。放射線治療の主な副作用の一つに、直腸への影響があります。 これは、放射線で前立腺のみ治療したいものの、隣接する臓器にもある程度の放射線が照射されてしまうことが原因です。 その多くは、程度の軽い直腸出血や肛門痛といったものです。しかし、5~10%程度の患者さんで治療が必要なレベルの直腸炎が起こっていました。
 放射線による直腸炎は、一度起こってしまうと治癒が難しく、出血を繰り返して患者さんの生活の質を著しく下げてしまうことがあります。
 この副作用を減らすことができるとされる画期的な方法が、ハイドロゲル直腸周囲スペーサーの留置です。
 ハイドロゲルスペーサーは、前立腺と直腸の間にある数ミリほどの筋膜に針を刺して、ハイドロゲルと呼ばれるゲル状の物質を注入する方法です(図1)。
図1ハイドロゲルスペーサーの留置
図1 ハイドロゲルスペーサーの留置
前立腺と直腸の間にある数ミリほどの筋膜に針を刺して、ハイドロゲルと呼ばれるゲル状の物質を注入する。
 注入したハイドロゲルによって、前立腺と直腸の間に数センチ程度の物理的な隙間ができ、直腸に高い線量の放射線が当たりにくくなるというものです(図2)。
 また、直腸に当たる放射線を軽減できれば、前立腺への1回あたりの照射量を増やすことができ、治療期間の短縮にもつながります。
 この新技術は2018年に日本でも保険適応となりました。 当センターでも、すでに導入されており、適応となる患者さんには、おすすめさせていただいております。
図2
Hydrogel (ハイドロゲル)を留置することにより、高い線量の放射線が照射される範囲から直腸が外れている。