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女性骨盤底センターは産婦人科、泌尿器科、消化器外科の3診療科共同で診療に当たっています。また、診療に加えて他部門と連携したサポート体制も充実しています。

左から 岩佐医師(泌尿器科) 石井医長(産婦人科) 北井センター長(産婦人科) 杢谷主任医長(消化器外科)
骨盤臓器脱とは、骨盤臓器である子宮、腟、腸管、膀胱を支持する神経、靭帯、筋肉が何らかの理由で受けたダメージが原因で生じます。妊娠と出産は骨盤臓器の支持組織の脆弱化をもたらすことがあり、骨盤臓器脱の主要な原因となります。また、加齢により支持組織の脆弱化が進行することもあり、出産から数十年が経過して骨盤臓器脱を発症する方も多くおられます。海外の報告では、出産を経験した女性の約50%が生涯のうちで骨盤臓器脱を発症すると言われています。骨盤臓器脱の症状としては腟または腰や背中が重く感じられたり、何かかたまりが腟の外に出ているような感覚があったり、頻尿や尿もれといった下部尿路症状を合併することもあります。高齢化が進む現在の日本では、骨盤臓器脱で苦しむ女性が増加していると考えられます。
骨盤臓器脱の原因として、妊娠と出産、加齢による支持組織の脆弱化の他に、肥満や便秘、長時間にわたる激しい運動などによる慢性的に腹圧がかかっていること、喫煙、遺伝的な要因などが影響すると考えられています。治療の目的は骨盤臓器脱、尿失禁などの排尿障害によるQOL低下を改善することにあります。症状が軽度の場合には保存的加療が選択されます。まずは減量指導や便秘の治療、職場などでの腹圧を回避するといった生活改善を行います。骨盤底筋トレーニングも有効である可能性があります。さらに骨盤臓器脱であればペッサリー挿入やサポート下着着用が、排尿障害に対しては内服加療が考慮されます。症状が高度で保存的加療が有効でない場合には手術加療が選択されます。特に骨盤臓器脱に対する手術加療は長い歴史とともに様々な手術法があります。臓器下垂の部位や程度、患者さんの年齢や合併症の有無により、望ましいと考える手術法を相談させていただきます。

昭和医科大学横浜市北部病院 女性骨盤底センターより抜粋

昭和医科大学横浜市北部病院 女性骨盤底センターより抜粋
― 治療目的は患者様の症状を改善し、QOLを改善することです ―
①骨盤底筋トレーニング
骨盤臓器脱と尿失禁の両方の原因となる骨盤底筋の筋力低下に対してトレーニングを行ないます。症状の増悪を防止するまたは遅らせるために、トレーニングが実施可能な全ての患者さんが対象となります。また、症状が軽度であれば一定の改善も期待できます。
最近では書籍やインターネットなどで骨盤底筋トレーニングについて取り上げられることも多いですが、骨盤底筋にしっかりと刺激が加わらないと有効な効果が得られません。そのため、当センターでは理学療法士とともに正しいトレーニング方法を習得してもらうことをお勧めしています。
骨盤底筋トレーニング個別指導
実施日時 月2回(第2、第4水曜日) 12時30分〜13時30分まで
実施場所 3階リハビリテーション部
定員 1日2名まで
費用 3,300円(自費診療)
②ペッサリー療法
ペッサリーとは塩化ビニール製またはシリコン製の円形リングであり、これを腟内に挿入することで骨盤内臓器が下垂してこないように支える治療法です。重篤な合併症を生じる可能性が低いことから、第一選択として行われることが多い治療法になります。特に、なるべく手術を避けたい場合や、合併症などで手術が実施困難な場合に有効な治療法です。
ペッサリー療法は外来通院で実施可能です。ペッサリー療法は日中活動時に装着し、夜間睡眠時には抜去するという自己着脱を行なっていただくことが望ましいため、自己着脱指導で実施可能と考えられる患者さんには、自己着脱に適しているシリコン製をお勧めします。自己着脱が難しい患者さんには塩化ビニール製またはシリコン製を使用し、定期的に外来へ通院していただいてリング交換や洗浄を行います。
当センターでは、シリコン製は自費診療、塩化ビニール製は保険診療として診療を行なっています。
(費用)
シリコン製 初診+リング挿入 16,500円(自費診療 リング代金含む)
再診+リング挿入 13,200円(自費診療 リング代金含む)
腟洗浄(自己着脱できない場合) 1,100円(自費診療)
塩化ビニール製 リング挿入または交換 2,900円(保険診療)
ペッサリー療法
Cooper surgical社ホームページより抜粋
③サポート下着
下着の上から履くことで、下垂した骨盤内臓器を支える医療機器です。会陰体を押し上げることで、腟を閉じる方向に力が加わり、深部で臓器の下垂を留めることができます。保存的加療を行なっている方で、炎症や脱落などでペッサリー療法が行えない場合に有効なことがあります。
購入を希望される場合には、サイズを計測してご自身で注文していただきます。
費用 11,000円/個
サポート下着
合同会社アダム医健ホームページより抜粋
骨盤臓器脱に対する治療法としては、靭帯や筋膜などの自己組織を用いて損傷部位を補強、修復する手術法(Native tissue repair)と、人工メッシュを用いて損傷部位を修復する術式とに分類され、それぞれに経腟アプローチによる術式と経腹アプローチによる術式があります。その他の高齢で性機能温存を希望しない場合には腟閉鎖術が選択されます。
女性下部尿路障害に対する手術法としては、腹圧性尿失禁に対する中部尿道スリング手術、過活動膀胱に対するボトックス膀胱壁内注入療法があります。
①Native tissue repair(経腟手術または経腹手術)
腟式手術として産婦人科では以前から行われてきました。腟式子宮全摘術はお腹を切らずに腟から腹腔内へ到達して子宮を摘出します。さらに下垂の部位や程度に合わせて腟断端挙上術や腟壁形成術を組み合わせて臓器脱を修復します。近年この領域にも内視鏡手術が導入されており、経腟手術と経腹手術の両方で腹腔鏡手術、ロボット支援下手術が実施可能です。自己組織を用いた修復ですので、修復部位は時間が経過すると再度下垂してくる可能性があります。
②ロボット支援下仙骨腟固定術(経腹メッシュ手術)
ポリプロピレン製(PPメッシュ)またはポリテトラフルオロエチレン製(PTFEメッシュ)の人工メッシュを用いて、子宮頸部を頭側へ挙上するとともに前後腟壁を補強する手術法です。子宮は頸部を残して亜全摘します(腟上部切断術)。前腟壁と膀胱との間を骨盤深部まで剥離して剥離範囲の前腟壁にメッシュを縫合固定します。後腟側にもメッシュを留置する場合には、後腟壁と直腸との間を剥離し前壁と同様にメッシュを縫合固定します。後腟壁の下垂が軽度の場合には、メッシュは留置せずに後腟壁を縫縮して補強する場合もあります。これらのメッシュを頭側へ牽引して子宮頸部を挙上し、岬角前面にメッシュを縫合固定します。人工メッシュを用いる術式のため、術後にメッシュ感染やメッシュ露出などの合併症のリスクがありますが、術後再発リスクは他の術式と比較して低いとされています。
ロボット支援下仙骨腟固定術
日本骨盤臓器脱手術学会ホームページより抜粋
③腟閉鎖術
前後の腟壁を縫合閉鎖することで骨盤内臓器が腟から脱出することを防ぎます。腟を閉鎖するために術後は性交渉が不可能になるため、性機能温存を希望されない場合が適応になります。子宮を温存する場合には術後に子宮悪性腫瘍の検査ができなくなるため、子宮摘出を併用する場合もあります。子宮を温存する中央腟閉鎖術と子宮を温存しない全腟閉鎖術があります。子宮全摘とともに腟閉鎖を行う場合は、先に述べたメッシュ手術と同様に術後再発リスクは低いとされています。
腟閉鎖術
日本骨盤臓器脱手術学会ホームページより抜粋
④中部尿道スリング手術(TVT手術)
ポリプロピレン製テープを尿道の背面に留置して腹側へ支持することで、腹圧時に尿もれが起こらないようにします。テープをどこから留置するかによってTVT手術とTOT手術に分類されますが、当センターでは経腹的にテープを留置するTVT手術を行なっています。上記の骨盤臓器脱に対する手術療法を行った後に、腹圧性尿失禁が顕在化して手術が必要となる場合があります。
⑤ボトックス膀胱壁内注入療法
難治性過活動膀胱に対して、膀胱鏡で観察を行いながら注射針を用いて膀胱の筋肉内へボトックス注射液を注入します。ボトックス注射は過活動膀胱以外にも眼瞼けいれん、顔面けいれん、痙性斜頸などに対して広く実施されています。
*TVM手術(経腟メッシュ手術)は現在のところ当センターでは実施しておりません。診察でTVM手術が最適であると判断された患者さんは、実施している医療機関へ紹介させていただきます。